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2002年の夏か秋頃だっただろうか、DDR EXTREMEの発表があった。beatmania THE FINALのように最終作とはっきり銘打っていたわけではなかったが、これにて一旦制作は打ち切られるということで、当時の僕はかなりショックを受けた。だがその分、EXTREMEはこれまでにない大作になりそうな気配があり、稼動前からだいぶ心を躍らせていた。

DDR EXTREMEの情報を得るために利用していたものの一つに、アルカディアという雑誌があった。知っている人も多いと思うが、アーケードゲーム専門の月刊情報誌である。アルカディアは、当時キッズクラブにもエジソン倶楽部にも置いてあり、いつでも自由に読むことができたため、基本的には自分で購入することはなかったが、DDR EXTREMEに関する記事が載っている号は全て購入したことをよく覚えている。


それで、ここからは話がDDRからは大きく逸れるのだが、当時アルカディアでは、一般の(?)若い女オタク数名が、毎月ひとつのテーマに関してアーケードゲームトークをするという、今の自分からすれば正直「くっさ」と言いたくなるようなコーナーが連載されていた。しかし当時の自分はこのコーナーがめちゃくちゃ好きだったのだ。

何が良かったかというと、とにかくそのコーナーに出ている女オタクが基本的にみんな可愛かった、それに尽きた。女オタクは全員写真が掲載されていて、まあ写真といってもモノクロで初代プリント倶楽部程度のサイズしかなかったのだが、少なくともその画像を見る限りでは顔が良かった。思春期であるにも関わらず男子校の中学に通い、同年代の女子との接点自体が皆無に近かった当時の自分にとって、自分と同じようにアーケードゲームが趣味でさらに顔も良い女たちがトークをしている様は、もうそれだけで「最高」だった。大人になった今の自分であれば、こういう女は基本的には地雷であるということがわかるのだが(失礼すぎる)、当時の自分は「こういう彼女がほしいなあ」と思いながら読んでいた。

ちなみに、このコーナーは毎回いろいろなアーケードゲームをテーマに語るため、彼女たちは格ゲーなども含めた様々なゲームに関する知識があった。ポップンミュージックが好きなだけの女オタクなら当時からこの世にたくさん存在していただろうが、あらゆるアーケードゲームをかじっている女オタクとなるとかなりの希少種だ。「それなのに全員顔が良いということがあり得るか? このコーナー自体がすべて嘘松だったという可能性すらあるのではないか?」と、今の僕は疑心暗鬼になってしまうのだが、当時の僕がそんなことを考えるはずもなかった。


また、このコーナーを読んでいると驚くべきことに気づいた。なんと、そのトークに参加している女オタクのうちの一人が、一人称として「僕」を使用していたのだった。

僕女という存在を初めて知ったのは、さらに時は遡り、僕が小学生の頃だった。そのきっかけとなった僕女とは、当時購入したニンテンドウ64用ソフト「ぷよぷよSUN」の主人公、アルル・ナジャである。どう見ても女の子にしか見えないアルルが自分のことを「僕」と呼んでいるのを見たとき、僕の脳は盛大にバグった。「僕」という一人称は男しか使わないものであると思っていたため、「こんな見た目でありながらまさか男だったりするのか? そんなわけあるか?」と混乱した。アルルは一人称「僕」を使用する女であるということがわかったのは、これよりも少し先の話となった。


二次元の僕女に対してですらこの有り様だったため、三次元で僕女に初遭遇したときの衝撃たるや、それは凄まじいものだった。「こんなに可愛いのにまさか男なのか?」と、当時の僕は事態をすぐに理解することができなかった。しかしなんとか気を確かに持ち、コーナーの趣旨やトークの内容等から考え、一人称が「僕」ではあるが女であろうと結論づけた。

このように初めは面食らったものの、僕は次第にその僕女を気に入っていった。なぜなら、この僕女が一番顔が良かったからだ。アーケードゲーマーであるうえにさらに一人称が「僕」となると、それはもう完全に見えている地雷なのだが(失礼すぎる)、もし当時この僕女が突然僕の目の前に現れたら、僕は一瞬で恋に落ちていたと思う。


しかしこの最高のコーナーも、程なくして突如打ち切りとなってしまい、僕の青春も幕を閉じた。そして、僕と同じくそのコーナーを愛読していた友人とともに、「アルカディアはクソ!」という話で盛り上がったのだった。

ちなみにこのコーナーでは、DDR EXTREMEが稼動した時期に、DDRをテーマにトークする回があった。どんな話をしていたかはほとんど覚えていないのだが、概ね2ndMIX前後の思い出話をしていたような気がする。他には「DDRやってるとふくらはぎあたりにDDR筋が付くよ」みたいな話をしていたのを覚えている。まあ正直、トークの内容自体はどうでもよかった。


とまあ色々と思い出のあるアルカディアなのだが、今もこの雑誌は刊行されているのだろうかと思い調べたところ、2015年に定期刊行は終了しているらしい。出版もアーケードゲームも下火のご時世、避けられなかった運命なのかもしれないが、好きだったものがなくなるのはやはり寂しいものだ。今や情報はなんでもネットですぐ手に入ってしまうが、紙の月刊誌でしか得られないワクワクが、当時確かに存在していたのだった(いい感じに締めたつもり)。


続く。